鳩対策として、「鳩が嫌がるもの」を利用する場合、視覚的なものだけでなく、鳩の他の感覚、すなわち聴覚や嗅覚、触覚に訴える方法も考えられます。これらの感覚を刺激することで、鳩にとって不快な環境を作り出し、寄り付かせないようにするのです。まず「聴覚」に訴える方法です。鳩には人間と同じように可聴域があり、特定の音を嫌うとされています。市販されている製品としては、鳩が嫌がる周波数の超音波を発生させる装置があります。人間には聞こえにくい高周波音で鳩を追い払うという仕組みですが、科学的な効果については賛否両論あり、効果の範囲も限定的である可能性があります。また、ペット(特に犬や猫)が嫌がる可能性もあるため、導入には注意が必要です。猛禽類の鳴き声や、破裂音などを定期的に発生させる装置もありますが、こちらは近隣への騒音問題に発展するリスクがあるため、住宅地での使用は慎重に検討する必要があります。次に「嗅覚」に訴える方法です。鳩は強い刺激臭や、特定のハーブ系の香りを嫌うと言われています。これを利用したのが、忌避剤です。木酢液や竹酢液、クレゾール石鹸のような強い匂いのものや、ハッカ油、レモングラス、ニンニクなどの成分を配合したスプレー、固形剤、ジェルなどが販売されています。これらを鳩がよく来る場所に散布したり設置したりすることで、鳩を遠ざける効果が期待されます。ただし、匂いは時間と共に薄れたり、雨風で流されたりするため、効果を持続させるには定期的な使用が必要です。また、人間にとっても匂いがきつい場合や、化学物質の安全性が懸念される場合もあります。そして「触覚」に訴える方法。これは鳩が物理的に触れることを嫌がるようにする対策です。代表的なのが、剣山(スパイク)や防鳥ワイヤーです。これらを鳩が止まりやすい手すりや軒先などに設置することで、足場をなくし、止まることを困難にします。また、粘着性のある忌避ジェルを塗布し、足がベタつく不快感を与える方法もあります。これらの物理的な対策は、鳩の慣れが生じにくく、比較的効果が高いとされています。このように、鳩の五感に訴える様々な対策法がありますが、いずれも一長一短があります。鳩の種類や性格、環境によって効果も異なるため、一つの方法に頼るのではなく、状況に合わせて複数の方法を試したり、組み合わせたりすることが、より効果的な鳩対策に繋がるでしょう。