家の中や庭先で、茶色くて小さなアリが長い行列を作って歩いているのを見かけたことはありませんか。そのアリの正体として最も可能性が高いのが「トビイロケアリ」です。トビイロケアリは、日本全国に広く分布するケアリ属の一種で、体長は2.5ミリメートルから3.5ミリメートル程度と比較的小型のアリです。名前の通り、体色は艶のある茶褐色から黒褐色をしています。腹柄節(胸部と腹部の間のくびれ)は一つです。彼らは非常に社会性が高く、餌を見つけると仲間を呼び寄せ、整然とした行列を作って巣まで運ぶ習性があります。この行列は、時に数メートルから十数メートルにも及ぶことがあります。食性は雑食性で、花の蜜やアブラムシの分泌する甘露、昆虫の死骸、そして人間の食べこぼしなど、様々なものを餌にします。巣は主に屋外の土中や石の下、朽ち木の中などに作られますが、時に家屋の壁の隙間や床下などにも侵入し、営巣することがあります。家の中で行列を見かける場合、砂糖や菓子くずなどの甘いものに誘われて侵入しているケースが多いです。彼らは直接的な病原菌の媒介者となることは少ないですが、食品に混入したり、電化製品の内部に入り込んで故障の原因になったりすることもあります。また、アブラムシを保護して甘露を得るという習性があるため、庭木や家庭菜園の害虫であるアブラムシを増やしてしまう間接的な害をもたらすこともあります。見分け方のポイントとしては、体長3ミリ前後の茶褐色のアリが、はっきりとした行列を作っていること、そして腹柄節が一つであることが挙げられます。よく似たアリにトビイロシワアリがいますが、こちらは腹柄節が二つあり、体表にシワ状の模様が見られます。もし家の中でトビイロケアリの行列を見つけたら、まずは餌となっているものを特定し、除去すること、そして侵入経路となっている隙間を塞ぐことが対策の基本となります。